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先に結論|相続は「財産・期限・人」の3つを同時に整理します
相続では、預貯金や不動産などのプラス財産だけでなく、借入金や保証なども確認します。そのうえで、誰が相続人になるのか、どの期限までに何をするのかを整理することが大切です。
会社や個人事業を引き継ぐ場合は、経営権、株式評価、納税資金、後継者育成も加わります。本記事では、全体像を8つの項目に絞って説明します。
本記事は制度の一般的な説明です。税制・法律・適用期限は変更されることがあります。個別の申告、遺産分割、登記、事業承継は、税務署・法務局などの最新情報を確認し、必要に応じて税理士・弁護士・司法書士などへご相談ください。
最初に確認したい主な期限
| 目安 | 主な手続 | 確認先 |
|---|---|---|
| 3か月以内 | 相続放棄をする場合の申述 | 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納税が必要な場合 | 被相続人の住所地を所轄する税務署 |
| 原則3年以内 | 相続で取得した不動産の相続登記 | 法務局 |
※起算点や例外があります。実際の期限は個別事情と公的案内で確認してください。
相続人と財産を確認する
最初に、戸籍をたどって法定相続人を確認します。配偶者は常に相続人となり、子、直系尊属、兄弟姉妹の順で相続人になる可能性があります。遺言があっても、相続人や遺留分の確認が不要になるわけではありません。
財産は次のように一覧化すると整理しやすくなります。
- プラス財産:預貯金、不動産、有価証券、保険金(受取人や契約形態で扱いが異なる)、車、貴金属、事業用資産など
- マイナス財産:借入金、未払金、保証債務、税金など
- 事業関係:非上場株式、個人事業の設備・在庫、経営者保証など
相続放棄は「知った時から3か月以内」が原則
相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内が原則です。財産調査をしても判断材料がそろわない場合は、家庭裁判所へ期間伸長を申し立てられることがあります。期限が短いため、借金や保証が疑われる場合は早めに確認しましょう。
遺産分割と遺言を整理する
遺言がない場合や、遺言だけでは分け方が決まらない財産がある場合は、相続人全員で遺産分割を話し合います。遺産分割協議書は、不動産の名義変更や預貯金の払戻しなどで必要になることがあります。
遺言には主に自筆証書遺言、公正証書遺言などがあります。自筆証書遺言は法務局の保管制度を利用できます。作成方法や保管方法によって必要な手続が異なるため、法務省や公証役場の案内を確認してください。
- 不動産や非上場株式は、共有状態を長く残さない
- 未成年者と親が共同相続人になる場合は、利益相反に注意する
- 二次相続まで含め、配偶者へ集中させることの影響も確認する
判断能力が低下している場合は成年後見制度も確認する
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が十分でない方を法律面で支援する制度です。法定後見は判断能力に応じて「後見・保佐・補助」に分かれます。任意後見は、本人が判断できるうちに契約し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます。
遺産分割だけを終えたら自由に終了できる制度ではありません。利用の必要性、費用、継続期間を確認してから申し立てます。
不動産は相続登記の期限を確認する
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から、原則として3年以内に申請する必要があります。制度開始前に発生した相続で、まだ登記していない不動産も対象になり得ます。
遺産分割がまとまらない場合に利用できる相続人申告登記などもあります。不動産がある場合は、固定資産税の通知書や登記事項証明書をもとに対象を洗い出しましょう。
相続税の基本を確認する
相続税は、正味の遺産額が基礎控除額を超える場合に申告・納税が必要です。
正味の遺産額は、遺産総額などから非課税財産、債務、葬式費用を控除し、対象となる贈与財産などを加えて計算します。相続税の申告と納税は、通常、死亡を知った日の翌日から10か月以内です。
死亡保険金の非課税限度額
被相続人が保険料を負担していた死亡保険金を相続人が受け取る場合、非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」です。契約者・被保険者・受取人の組み合わせで税目が変わるため、契約内容を確認してください。
配偶者の税額軽減
配偶者が実際に取得した正味の遺産額が「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までなら、配偶者に相続税がかからない制度です。適用には申告や分割状況などの要件があります。
暦年課税の贈与加算は段階的に7年へ
「生前贈与は一律3年だけ確認すればよい」とは限りません。2026年12月31日以前に開始した相続は原則として相続開始前3年以内ですが、2027年以後は加算対象期間が段階的に延び、2031年1月1日以後に開始した相続では原則7年になります。贈与日と相続開始日で扱いが変わるため、記録を残して確認しましょう。
公式確認先:
土地・建物・非上場株式を評価する
相続税では、財産ごとの評価方法を使います。土地は路線価方式または倍率方式、家屋は原則として固定資産税評価額を基礎に確認します。貸地・貸家・借地権、農地、非上場株式などは評価が複雑です。
被相続人等の居住用宅地などが一定の要件を満たす場合、小規模宅地等の特例により評価額を減額できることがあります。特定居住用宅地等は330㎡まで80%減額される制度ですが、取得者や居住・保有状況などの要件確認が必要です。
贈与税と相続時精算課税を区別する
暦年課税では、1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除110万円を差し引いて贈与税を計算します。
相続時精算課税では、2024年1月1日以後の贈与について年110万円の基礎控除が設けられています。さらに、期限内申告などの要件を満たす場合は累計2,500万円の特別控除があります。将来の相続税計算へ影響する制度なので、単に「2,500万円まで無税」と判断せず、贈与者ごとに長期の影響を比較してください。
事業承継は株式だけでなく経営全体を引き継ぐ
事業承継では、誰に経営を任せるかだけでなく、議決権、株式評価、納税資金、借入金・経営者保証、取引先との関係、後継者育成を同時に考えます。
- 株主名簿と持株比率を確認する
- 後継者と承継時期を決める
- 非上場株式と事業用資産を評価する
- 贈与・相続・売買などの方法を比較する
- 納税資金と会社の資金繰りを確認する
- 遺留分や他の相続人への配慮を整理する
事業承継税制の期限
法人版事業承継税制の特例措置は、一定の要件のもとで非上場株式に係る贈与税・相続税の納税猶予等を受ける制度です。2026年7月時点では、特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、対象となる事業承継の期限は2027年12月31日です。
個人版事業承継税制は、個人事業承継計画の提出期限が2028年9月30日、承継期限が2028年12月31日と案内されています。適用には多数の要件と継続報告があるため、早めに認定経営革新等支援機関や税理士へ相談してください。
事業承継の遺留分対策を詳しく確認する → 固定合意と除外合意の違い
相続・事業承継チェックリスト
- 戸籍で相続人を確認したか
- 預貯金・不動産・有価証券・保険・借入金を一覧化したか
- 3か月、10か月、3年の期限を確認したか
- 遺言書の有無と保管場所を確認したか
- 不動産の登記名義を確認したか
- 生前贈与の年月日と金額を記録しているか
- 非上場株式の株主・議決権・評価額を確認したか
- 後継者、承継時期、納税資金を話し合ったか
よくある質問
遺産が基礎控除以下なら相続税の申告は不要ですか?
正味の遺産額が基礎控除額以下なら、一般には相続税の申告・納税は不要です。ただし、財産評価や贈与加算を含めて判定する必要があります。また、特例を使って税額がゼロになる場合は申告が必要なことがあります。
相続登記は遺産分割が終わるまで何もしなくてよいですか?
相続登記には期限があります。遺産分割がまとまらない場合も相続人申告登記などの制度があるため、放置せず法務局または司法書士へ確認してください。
事業承継はいつから準備すべきですか?
後継者育成や株式の集約には時間がかかります。税制の期限直前では選択肢が限られるため、後継者候補が決まる前から株主構成・事業用資産・保証・資金繰りを整理しておくことが有効です。
まとめ
相続は、財産調査、相続人確認、期限管理を同時に進めることが基本です。事業承継では、そこに経営権、株式、後継者、資金繰りが加わります。
まずは財産と期限を一覧にし、争いがある場合は弁護士、相続登記は司法書士、相続税・贈与税は税理士、事業承継全体は事業承継・引継ぎ支援センターや認定経営革新等支援機関へ相談してください。
🐤 ひよこ社長|マネーライフ研究所
FP(ファイナンシャル・プランナー)1級保有。お金の勉強で学んだ知識を、日常で実践できる形で発信しています。難しいお金の話を「やさしく・今日からできる」ようにかみ砕いて解説します。
相続・事業承継シリーズ
- 相続における民法と相続税法の違い
- 相続・事業承継の全体像(この記事)
- 後継者への株式移転
- 固定合意と除外合意の違い
- FP1級実技Part1の相談内容
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